白二郎ちゃんのVR落語「死神」の個人的見どころなど。
歌丸師匠が亡くなられましたね。笑点での円楽師匠との掛け合いも好きでしたし、このかたの落語は艶っぽくて品があって僕は好きでした。(とかいって、師匠の初めて聞いた噺が「つる」だったりしますけど)
ちなみに、VR寄席で新作落語を披露してくださった桂枝太郎師匠は、桂歌丸師匠の最後のお弟子さんにあたります。ですので、意外にこのニュースは僕らにとっても縁のある話なのです。
ところで、VR落語といえば、この前白二郎ちゃんがVR落語で「死神」をやりました。
ちょっとコメント欄では書ききれないなと思ったので、ブログ記事にしようと思います。
「死神」は、一応古典落語ではありますが、かなり最近できた話で、明治くらいだったかと思います。なので、この死神像は、厳密には日本文化のどこにも存在しません。ネタ元もたしか海外の話がもとだった気がします。
そういう意味では、新しいもの同士、VRとも相性がよかったかもしれません。
白二郎ちゃんが「死神」をやるというので、僕はあそこはどうするんだろうここはどうするんだろうと色々想像して楽しみにしていました。
以下は、個人的な見どころポイントです。
扇子
白二郎ちゃんがちゃんと扇子を杖に見立てていて、素直に感動してしまいました。ちゃんと扇子を使った落語をVRで見ることができるなんて!
「死神」での杖の見立ては、実際に体重をかけるわけではないので塩梅が難しいのですが、VRでの小道具の扱いも同じくらい難しいかと思います。
よくあれを再現したなぁと思います。
あと、「死神」だと、途中で男が医者を訪ねるシーンで、門を叩く音に見立てる場合があるんですが、これはさすがにVRでの再現はちょっと難しいですね。
呪文
噺の中に登場する「あじゃらかもくれん、○○○、テケレッツのパ」の呪文は、実は初期の「死神」にはなくて、あまりに話が暗いので、ちょっとくすりとする要素として入れられるようになったそうです。○○○に何を入れるかは、人によって違って、ここにどうユーモアを仕込むかは、「死神」演目の場合、結構勘所です。
白二郎ちゃんも、やっぱり一ひねり入れて、「あじゃらかもくれん、世知辛い、テケレッツのパ」と言っていましたね。
ユーモアの入れどころ
「死神」は全体的に怖い話なので、ユーモアの入れどころが難しいのですが、個人的には死神に導かれて、ロウソクの部屋につれられていく道中くらいからユーモアを控えていくのが、聞きやすいかなと思っています。
白二郎ちゃんも、さすがというか勘所がわかっていて、小ネタは中盤に持ってきていましたね。
死神の「消えるよ」コール
「死神」のおそろしいところといえば、なんといってもラストのあのぬるっとした「消えるよ」コールじゃないでしょうか。実際には「消えるよ」のセリフは、江戸訛りによって「きぇーるよ」と聞こえます。これがまた怖いのです。
白二郎ちゃんは、ちょっと訛ったVRアライグマですが、江戸訛りではないので、ここをどう処理するのかなと思っていたのですが、今回は普通に標準語で「消えるよ」と発音していました。
サゲ
「寿限無」のサゲは、人死にの出ない新しい方のサゲを使った白二郎ちゃん、「死神」ももしかして死なない方のパターンでサゲるかなと思っていたのですが、ここは最も王道なサゲかたで来ました。
また、最後は、VRC Emoteのdeathを使ってくるのではないかと読みを張っていたのですが、これもハズレてしまいました笑 「死神」のサゲは前方に倒れるのですが、Emoteのdeathは仰向けに倒れるので、そのまま使うのには具合が悪かったのかもしれません。
以上、個人的な見どころポイントでした。
VR落語を見ているほとんどのかたは、落語を今まであまり聴かれたことのないかただと思うので、多分「死神」も新鮮に楽しまれたことと思います。一方で、古典落語は、今までたくさんの演者が積み重ねてきたものですから、「決まった演目をどう料理するか」という点も、大変な魅力です。
ご興味があれば、上記のようなポイントに注目しながら、もう一度白二郎ちゃんの落語を聴き直すと、また楽しいかもしれません。
あと、「死神」は、とても江戸訛りの映える落語なので、ぜひ一度がっつり江戸訛りで演じられている噺家さんのも聴いてみてほしいです。
ではでは。